児童精神科・心療内科にはいつ、どう繋がる? 受診の目安と切り出し方

植家 雄士

THE INSIGHT / 専門家コラム

児童精神科・心療内科にはいつ、どう繋がる?
受診の目安と切り出し方

〜保護者の不安を和らげ、支援を結ぶ医療の役割〜

むすびメンタルクリニック 院長 植家雄士

執筆:むすびメンタルクリニック 院長 植家雄士

「スクールカウンセラーや学校の先生には相談できているけれど、そこから病院(児童精神科・心療内科)へ行くとなると、どうにも足が重い……」

不登校や行きしぶりに悩むご家庭の中で、このような葛藤を抱えられている親御様は非常に多くいらっしゃいます。子どもにどう切り出せばいいのか分からず、受診に繋げられないまま時間が過ぎてしまうケースも少なくありません。

なぜ、医療へ繋がることにこれほど大きな壁が存在するのでしょうか。児童精神科医の立場から、医療へ繋がるまでのハードル、具体的な受診の目安と切り出し方、そして医療がご家族に提供できる本当の役割についてお伝えします。

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1. 医療に繋がるまでの「2つの大きなハードル」

医療機関への受診を阻む要因には、大きく分けて「心理的ハードル」と「物理的・構造的ハードル」の2つが存在します。

① 心理的ハードル:「親としての罪悪感」と「子どもへのレッテル貼り」

多くの保護者様が、「精神科に連れて行く=我が子を病気だと認めること」「自分の育て方が悪かったからだ」と捉え、強い抵抗感や罪悪感を抱かれています。

また、子ども自身も「自分はおかしくなってしまったのか」「親から精神病だと決めつけられた」と感じて傷つくため、家庭内で受診を切り出すこと自体が最大の難所になります。

これは、「メンタルクリニックがどのような場所なのか」が正しく知られていないことが大きな原因です。

クリニックは「病名のレッテルを貼って閉じ込める場所」ではありません。お子さんの心身が今どれくらい疲れ切っているか(エネルギー状態)を客観的に整理し、親子が孤立しないよう社会と繋ぎ直す場所なのです。

② 物理的・構造的ハードル:「初診待ちの長さ」と「子どもの受診拒否」

全国的に児童精神科の予約は極めて困難で、「思い切って電話したのに初診が数ヶ月先と言われた」というケースが珍しくありません。この「繋がらない期間」に、保護者様はより一層孤立を深めてしまいます。

さらに、「親が連れて行こうとしても本人が部屋から出ない・車から降りない」という現場のリアルな拒否もあります。

2. 受診を検討すべき「具体的な目安(サイン)」

「こんなことで受診していいのだろうか」と迷われる方は多いですが、「どうしたらいいかわからない」「様子がおかしい」と親御様が感じた時点が、すでに十分な受診の目安です。

具体的には、以下のようなサインが続いていれば相談を検討してください。

身体が発しているSOS(身体症状)

  • 朝の体調不良:登校時間になると頭痛、腹痛、吐き気、微熱などが出る(休日は元気に過ごせる場合も含む)。
  • 睡眠の乱れ:夜眠れない、朝起きられない、昼夜逆転が定着している(起立性調節障害などの可能性)。

心が発しているSOS(感情・意欲の変化)

  • 激しい情緒不安定:学校の話題でパニックになる、泣き叫ぶ、あるいは極度にいらだちや「無気力」が見られる。
  • 強い自責感:「自分がダメだ」と責める、「消えたい」「死にたい」と口にする。

背景にある「生きづらさ」のサイン

  • 教室の音や匂いに耐えられない(感覚過敏・ASD傾向)、友達との摩擦が絶えない、急激に勉強についていけなくなった(LD傾向)など。

3. 子どもへの「受診の切り出し方」と家庭での声かけ

家庭内で受診を提案する際、無理に説得したり「精神科に行くよ」とストレートに伝えたりすると、恐怖心や反発を強めてしまいます。お子さんの自尊心を守るため、以下の工夫を試してみてください。

① 「こころの病気」ではなく「身体の不調を整える」目的で伝える

子どもにとって精神科は未知の恐怖です。「頭痛や朝起きられない体調を少し楽にするために、睡眠や体調管理の専門家に相談しに行こう」など、身体の症状にフォーカスした伝え方をするとハードルが下がります。

② 「あなたが心配」ではなく「親のアドバイスをもらいに」と伝える

「あなたのために行く」という言い方は、子どもに「自分は迷惑をかけている」という罪悪感を与えます。

おすすめなのは、

「お父さん(お母さん)も、あなたをどうサポートすればいいか悩んでいるから、専門の先生にアドバイスをもらいに行きたいんだ。一緒についてきてくれないかな?」

というスタンスです。

③ 診察室は「話さなくてもいい場所」だと伝える

「何を話せばいいかわからない」と不安がるお子様には、「無理に悩みを話さなくても大丈夫だよ」と伝えてあげてください。

実際の診察では、いきなり悩みを詰問することはありません。好きなことの話をしたり、対面でカードゲームやボードゲームなどのアナログゲームを一緒に行ったりしながら、まずは「安心できる関係作り」から始めます。

※ 本人が部屋から出ず受診を拒否する場合

無理に引っ張り出す必要はありません。まずは保護者様だけで相談(家族面談やカウンセリング等)にお越しいただくことも可能です。親御さんが専門医とつながり、家庭での接し方のアドバイスを得るだけでも、家庭内の空気や接し方が変わり、お子さんの回復に向けた大きな一歩となります。

4. 医療に対して「期待・求めてよい役割」とは

現場や保護者様が医療に求めているものは、単なる「病名」や「お薬の処方」だけではありません。医療機関を活用することで、ご家族は以下のような大きな救いを得ることができます。

① 客観的なアセスメント(「親のせいではない」という証明)

保護者様が最も救われるのは、専門医から「これはお母さん・お父さんの育て方の問題ではありません。お子さんの脳や心が今、エネルギー切れ(限界状態)を起こしているだけですよ」と客観的に告げられることです。自責の念から解放され、前を向くきっかけになります。

② 学校へ説明・協力してもらうための「診断書・意見書」

不登校の対応において、保護者様お一人で学校側と交渉するのは大きなエネルギーを消耗します。

医療機関が発行する診断書や意見書は、保護者様が訴えてきた現状を客観的に裏付ける強力なツールとなります。完全な休養の必要性を伝えるだけでなく、再登校に向けた「別室登校」「登校時間の短縮」「テストや学習面での合理的配慮」などを学校側からスムーズに引き出す助けになります。

5. おわりに:一人で抱え込まず、相談してください

「初診待ちが長くて繋がらない」という期間も、焦って学校に戻そうとせず、「家庭を安全な基地にして心身を休ませる期間」と割り切ることが大切です。

「学校に行きたくない」というSOSは、これまでの頑張りの限界を示すサインであり、これからの環境を見直す大切なきっかけでもあります。

児童精神科や心療内科は、子どもを矯正する場所でも、親を評価する場所でもありません。親子が肩の荷を少し下ろし、これからどう歩んでいくかを一緒に考えるサポーターです。

「こんなことで相談してもいいのかな」と思われたときこそ、どうぞお気軽に医療の扉を叩いてみてください。

執筆者プロフィール

むすびメンタルクリニック 院長 植家雄士

むすびメンタルクリニック 院長

植家 雄士

児童精神科医。心療内科・精神科・児童精神科を診療する「むすびメンタルクリニック」院長。

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この記事を書いた人

植家 雄士

児童精神科医。心療内科・精神科・児童精神科を診療する「むすびメンタルクリニック」院長。

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