THE INSIGHT / CoConの本棚から
「学校に行けなくなったのは、お母さんのせいじゃない。」 36年・8,000人の伴走から届いた一冊──谷圭祐『不登校の子どもにお母さんができる一番大事なこと』
わが子が学校に行けなくなったとき、多くのお母さんが自分を責める思考のループに入ります。「私の育て方が悪かったのかな」「もっと早く気づいていれば」「私が働いていたせいかもしれない」──。 そんなお母さんに向けて、36年間、8,000人以上の不登校の子どもたちと母親に向き合ってきた谷圭祐さん(パーソナルアカデミー代表)が書き下ろした一冊が、静かに話題になっています。 『不登校の子どもにお母さんができる一番大事なこと』(谷圭祐 著/游藝舎)──今回のTHE INSIGHTでは、この本をCoConの視点でご紹介します。
書籍情報
お母さんが変われば、世界が変わる。
本書の核──「お母さんのせいじゃない」から始まる一冊
この本の冒頭に置かれている言葉は、じつはとても大切な”問いのリセット”です。
「学校に行けなくなったのは、お母さんのせいじゃない。」
──本書メッセージより
お母さんが自分を責めている限り、家の中の空気は静かにでも確実に重くなっていく──。谷さんはこの構造を、8,000人分の伴走を通じて何度も見てきた方です。だからこそこの本は、”どうすれば学校に戻せるか”の技術論から始めません。まず、お母さんの内側にかかっている無意識の重荷を、そっと下ろすところから始まります。
「あなたのせいじゃない」と言われて、素直に受け取れるまでには、時間がかかります。でもその言葉を受け取れたときに、はじめて次のページをめくる余裕が生まれる。この一冊の構成は、そうした心の順序に沿って組み立てられています。
3つの感情に、丁寧に寄り添う
本書は、不登校のお子さんを持つお母さんが抱えやすい3つの感情に、順番に丁寧に寄り添っていきます。
01. 焦り──「どうしたら学校に行けるようになるのか」
先が見えない不安と、”時間だけが過ぎていく”感覚に押しつぶされそうな気持ち。「早くなんとかしなければ」という焦りの正体を、まず言語化するところから。
02. 自責──「自分を責めてしまう気持ち」
夜、子どもが寝てから泣いてしまう。SNSで他所のお子さんを見て自分を責める。この静かで慢性的な自責を、「あなたのせいじゃない」の言葉で、根っこから緩めるのが本書の中盤です。
03. イライラ──「子どもの気持ちがわからず、つい怒ってしまう」
何もしないでゴロゴロしているように見える。声をかけても返事もしない。頭ではわかっていても、感情が追いつかない──。子どもの行動に隠されたメッセージを読み解くヒントが、ここで提示されます。
この3つの感情は、独立しているようでいて、実は根っこで繋がっています。“焦り”が”自責”を生み、”自責”が”イライラ”を生む──。この負の連鎖を、どこで断ち切るか。本書は、その入口を”お母さん自身の内側”に見出しています。
「子どもを変える前に、お母さん自身が笑顔になる」
本書のもうひとつの軸は、「子どもを変えようとする前に、まずお母さん自身が笑顔になる」という視点の提示です。
この言葉を最初に聞くと、「もう十分頑張っているのに、これ以上私に何を求めるの?」と感じる方もいるかもしれません。でも谷さんが言いたいのは、そういう努力の話ではありません。“お母さんが自分の人生を楽しむこと”そのものが、家庭の空気を変える──というシンプルで、しかし奥深い話です。
子どもはお母さんの笑顔が大好きです。お母さんが変われば世界が変わる! さあ今日から、お母さん自身の人生を思いっきり楽しんでください。
──本書メッセージより
「子どものために」を軸にしてきたお母さんに、「あなた自身のために」の許可を静かに手渡す本──。この構造が、本書のもっとも豊かなところだと感じます。
著者・谷圭祐さんの36年の伴走
谷圭祐さんは、1965年生まれ。大手予備校、大検予備校、個別指導塾を経て、NPO法人京都教育サポートセンターの設立に参加されました。
2003年に株式会社パーソナルアカデミーを設立し、学習塾・フリースクールを京都で開校。2005年には大阪校を開校し、2008年に法人化。“不登校の子どもたちと歩んで36年、8,000人以上との伴走”という膨大な実践知が、この一冊のバックボーンにあります。
既著には、進路情報にフォーカスした『こんな進路があったか! 不登校からの進学』も。学びの現場と、進路の現場の両方を、長年見続けてこられた方の言葉には、独特の”地面のある確かさ”があります。
こんな方に、届いてほしい
01. わが子の不登校で、ご自身を責めてしまう瞬間があるお母さん
02. 「早くなんとかしないと」と、常に胸のあたりが焦っているお母さん
03. 子どもの表情が変わってきて、接し方に戸惑っているお母さん
04. “自分の楽しみ”がここ数年見つけられていないお母さん
05. 支援者やパートナー(お父さん)が、お母さんに贈りたい本を探しているケースにも
CoConから、この一冊へ
CoConは、日々多くの不登校のご家庭のご相談を受けています。その中でいちばんよくお会いするのが、「私が原因かもしれない」と静かに自分を刺し続けているお母さんの姿です。
本書の「あなたのせいじゃない」という言葉は、いっけんシンプルに見えます。でも、36年、8,000人分の伴走の重みを背負って書かれた言葉として受け取ると、まったく違う響きを持ちます。この本を書けるのは、こうした年月を過ごしてきた方だからこそ、なのです。
また、本書のタイトルは「お母さんが」となっていますが、CoConからはお父さんが読んでも意味のある一冊だと感じました。パートナーが何を抱えているのか、何を言われて楽になれるのか──それを知る手がかりが、たくさん詰まっています。“お母さんに、こう言えるようになりたい”というお父さんにも、そっとお勧めしたい本です。
ご自身のために、あるいは大切な誰かのために。あなたの本棚に、一冊お迎えする価値のある本です。