「この子は、将来ちゃんと働けるんだろうか」――。お子さんの不登校が長引いてくると、目の前の勉強の遅れよりも、もっと先の”将来”のほうが怖くなってくる。多くの保護者の方が、口には出さないけれど抱えている本音です。けれど、不登校の経験と”その先”は、一本道でつながっているわけではありません。今回のコラムでは、進路の選択肢の一つとして「障がい者就労継続支援事業所」という制度を取り上げ、医療や進路と同じく”こういう道もある”と知っておくための地図をお渡しします。

⚖ この記事の立場について

不登校は、障がいではありません。本記事は「不登校の子の行き着く先が福祉的就労だ」という意味では決してありません。診断や本人の状態を前提に、将来の進路の”選択肢”を偏見なく・正確に知っておくための情報整理としてお読みください。

「学校に行けない=社会に出られない」ではない

まず、ほどいておきたい思い込みがあります。それは「学校に行けない子は、社会に出られない」という不安です。

実際には、不登校を経験した子どもたちの進路は、思っているよりずっと多様です。通信制・定時制高校、高卒認定からの進学、アルバイトからの就労、一般企業への就職――。中学時代に学校へ通えなかった子が、自分のペースに合う環境を見つけて社会とつながっていく例はいくらでもあります。その多様な選択肢の”一つ”として、福祉的な就労支援の制度があります。ゴールは一本道ではない。まずはこの前提だけでも持っておくと、少し呼吸が楽になります。

障がい者就労継続支援とは――A型とB型のちがい

「就労継続支援」は、障がいのある方が働く力をつけたり、自分のペースで働いたりするための障がい福祉サービスです。大きく A型B型 の2種類があります。

就労継続支援A型(雇用契約あり)

事業所と雇用契約を結んで働くタイプ。労働基準法や最低賃金法が適用され、最低賃金以上の給料が保障されます。全国の平均給料は月額およそ8万7千円(令和5年度)。「一般企業での就労はまだ難しいけれど、支援があれば雇用契約に基づいて働ける」という方が対象です。

就労継続支援B型(雇用契約なし)

雇用契約を結ばず、作業に応じた「工賃」を受け取りながら働くタイプ。全国の平均工賃は月額およそ2万3千円(令和5年度)。そのぶん通所日数や作業時間を柔軟に設定でき、週数回・短時間から無理なく始められるのが特長。体調に波がある方、まず生活リズムを整えたい方に向いています。

💡 一度入ったら抜けられない、ではない

利用には市区町村が発行する「障害福祉サービス受給者証」が必要です。障害者手帳がなくても、医師の診断や自治体の判断で利用できる場合があります。「B型 → A型 → 一般就労」とステップアップしていく道もあります。

実際の事業所はどんなところ?――PCスキルが身につく「あしか」の例

制度の説明だけではイメージが湧きにくいかもしれません。実際の一例として、東京・新宿にある就労継続支援A型事業所「あしか」をご紹介します。あしかは、パソコンを使った仕事を通じてスキルアップを目指せるのが大きな特徴の事業所です。

あしかで身につく4つのこと

生活リズム(週5日・1日4時間働き、一般就労に向けた体力をつける) ② 社会経験(チームで働き、挨拶・身だしなみ・コミュニケーション力を育む) ③ スキルの習得(一般企業でも通用する技術、特にPC作業のスキルアップ) ④ 障がいとの付き合い方(自分の特性と必要な配慮を知り、適職探しに生かす)

担当する仕事は、Webサイトの制作・保守、企業ロゴやチラシのグラフィックデザイン、名刺・アンケートのデータ入力や事務代行、オンラインセミナーの動画編集、イラスト制作など。職業指導員のサポートを受けながら、いわゆる”手に職”につながるPC業務に取り組みます。同社のホームページも、スタッフ自身が制作したものだそうです。

利用者の声

「パソコン作業は入社前はあまりできなかったが、業務をこなすうちにスキルが身についた」「失っていた仕事への自信を取り戻せた」「通院での遅刻・早退にかなり融通を効かせてくれる」――。利用までの流れも、いきなり契約ではなく「見学・面談 → 2週間のお試し利用 → 採用連絡 → 受給者証の手続き → 勤務開始」と、段階を踏んで自分に合うか確かめられるようになっています。

こうした事業所は全国にたくさんあり、扱う仕事も農作業や軽作業、PC業務、ものづくりなどさまざまです。「働く」と一口に言っても、その形はいくつもある――あしかのような場所は、それを具体的に教えてくれます。

知っておくと安心な”つながり方の地図”

「将来、もし必要になったら、どこに相談すればいいの?」――今すぐではなく、いざというときのために、入口だけ知っておきましょう。

① 学校の進路指導/自治体の障害福祉窓口

進路指導や特別支援教育コーディネーター、市区町村の障害福祉窓口は、制度利用の最初の入口。「こんな子なんですが、将来どんな選択肢がありますか」と情報を集めるつもりで訪ねて大丈夫です。

② 相談支援事業所

障害福祉サービスの利用計画(サービス等利用計画)を一緒に作ってくれる専門の窓口。受給者証の手続きの相談先にもなります。

③ 地域若者サポートステーション(サポステ)

働くことに悩む若者を支える厚労省委託の支援機関。就労に向けた相談・職業体験などを無料で受けられます。一般就労と福祉的就労の間で迷うときの相談先に。

④ ひきこもり地域支援センター

長期のひきこもりに対応する相談窓口。本人が外に出られない段階から、家庭ごと相談に乗ってくれます。どこも、今日明日に契約を迫る場所ではありません。

よくある誤解と、向き合う

最後に、保護者の方が抱きがちな不安を、いくつかほどいておきます。

❌ よくある誤解

「福祉的就労はレールから外れること」「一度使ったら一般企業では働けない」「不登校だから、いずれ福祉に頼ることになる」

⭕ 実際は

自分の特性に合った働き方を選ぶ立派な進路の一つ。B型→A型→一般就労とステップアップする人も大勢。不登校の子の多くは別の進路に進みます。

”知っておく”ことと”使う”ことは、まったく別の話です。これはあくまで、数ある選択肢のうちの一つ。今その全部を決めなくて大丈夫です。

まとめ:これは「ゴール」ではなく「選択肢の一つ」

「不登校の先は、こうなる」と決まった道はありません。大切なのは、進路の選択肢をできるだけ多く”地図”として手元に持っておくこと。通信制高校も、一般就労も、あしかのような就労継続支援も、相談できる窓口も――どれも、今この瞬間に全部を選ぶ必要はありません。お子さんの状態と歩みに合わせて、必要になったときに必要なものを手に取ればいい。急がず、でも止まらず、一つずつ繋いでいく。それで十分です。CoConは、その網の目の一つの結び目として、これからもご家庭の側に立ち続けます。

👨‍👩‍👧 不登校の家庭をひとりにしない。

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※ 本記事で紹介した制度の数値(平均給料・工賃など)は令和5年度の全国平均にもとづくものです。利用要件や金額は地域・事業所・年度によって異なります。実際のご利用にあたっては、お住まいの自治体の障害福祉窓口や相談支援事業所にご確認ください。事業所「あしか」の情報は、株式会社あしか公式サイト(ashica.net)の掲載内容にもとづいています。

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