お子さんの不登校をきっかけに、スクールカウンセラー(SC)に相談してみた。けれど――。「月に1回しか来ない」「話を聞いてくれるだけで、具体的なアドバイスがない」「何のために行ったか分からない」。そんなモヤモヤを抱えたことはありませんか?じつは、その違和感の半分以上は、“カウンセリングの役割”についての誤解から生まれています。SCは”答え”を出す人ではなく、”整理”を一緒にする人。そして意外と知られていないのが、SCは保護者が使うほうが有効活用できることが多いという事実。今回のコラムでは、SCの本当の使い方を整理します。
目次
“使えない”と感じてしまう、3つの誤解
まず、多くの保護者の方が抱えてしまう典型的な「期待値のズレ」を整理します。
「結局、私の話を聞いてくれただけで終わった」 「『お母さんのお気持ちはよくわかりました』だけだった」 「具体的に、明日からどうすればいいかが分からない」 「子どもを連れて行ったけど、続かなかった」
これは、SCの能力が低いわけでも、相談者である保護者が悪いわけでもありません。“カウンセラーの仕事の中身”に対する事前情報がほとんどないまま会いに行くから起こる、構造的な期待値のズレです。
誤解①:カウンセラーは”アドバイスをくれる人”
これがいちばん大きな誤解です。カウンセラーは、医師でもコンサルタントでも先生でもありません。“問題を解く人”ではなく、”問題と向き合う本人を支える人”です。「○○すべき」という答えを提示するのは、原則として彼らの役割ではないのです。
誤解②:「子どもを連れて行く場所」だ
これも多くのご家庭が当然と思っている前提です。けれど、不登校の子どもは、たいてい“知らない大人に自分の状況を話す”こと自体が難しい。逆に、保護者は話したいことが山ほどある。SCは、子ども本人だけでなく、保護者単独の相談も受け付けています――この事実が、まだ十分に知られていません。
誤解③:月1回じゃ意味がない
月1回は確かに少ない。けれど“使い方次第”で、月1回でも十分に意味を持ちます。月1の予定が決まっているから、「次に何を相談しよう」と考える1か月になる。話すべきことを整理する習慣が、ご家庭の中に自然と育っていきます。後ほどコツをまとめます。
カウンセラーは”答え”ではなく”整理”役
じゃあ、SCは何をしてくれるのか。一言で言えば、“あなたの中にすでにある言葉を、外に出すお手伝い”です。
カウンセラーが提供している価値
・“話す”ことで頭の中の散らかりを整理する場(言語化の支援) ・否定されない、ジャッジされない安全な対話の時間(評価しない傾聴) ・本人の中にすでにある”答え”に気づくきっかけ(自己理解の促進) ・必要なら、他の支援先(医療・教育・福祉)へ橋渡し(リファー機能)
「で、結局どうすればいいんですか?」と聞きたくなる気持ちは自然です。けれど、答えが向こうから降ってくるのを待つより、“自分の中の答えに気づく時間”として40分を使うと、SCの価値が一気に立ち上がってきます。
じつは、SCは”親が使う”のが効率的
不登校支援の現場で、CoConがしばしばお伝えしているのが、「SCはまず保護者の方が使うのがおすすめ」という考え方です。理由は3つあります。
不登校の子どもは”話す気力”が枯れていることが多い
「知らない大人にもう一度自分の状況を説明する」というタスクは、不登校の子にとってハードルが高い。保護者が話して、状況を共有してもらうほうが、ずっと現実的です。
保護者の心が整うと、子どもへの関わり方が変わる
保護者がカウンセリングで心の余白を取り戻すこと自体が、結果的に子どもの回復を支える。家庭の空気が変わるだけで、お子さんの過ごし方が変わることは少なくありません。
学校との”通訳”役を担ってもらえる
SCは校内の教職員と日常的に情報共有できる立場にいます。保護者の話したことを、必要に応じて担任や管理職に橋渡しする役割を担ってくれます。保護者が直接担任と話しにくいことも、SCを経由すると角が立ちにくいことがあります。
💡 つまり――
SCは、お子さんが直接話せない時期にこそ、「保護者の心の整え場」「学校との橋渡し役」として最も力を発揮します。”子どもを連れて行く場所”だけだと思っていると、せっかくの資源を取りこぼしてしまいます。
月1のSCを最大化する、4つのコツ
月1回・40分という限られた時間を、最大限に活かすためのコツを4つご紹介します。
🗓 ① 次回の予約は、必ずその場で取る
SCは予約が埋まりやすい。「次回はまた連絡します」だと、半年予約が空くこともあります。当日のうちに次回の予約まで確定させると、月1ペースが定着します。
📝 ② 月の出来事を、メモして持参する
「えーっと…」と思い出すだけで時間が溶けます。その月の出来事・気づき・心配ごとをA4一枚に箇条書きで持参。SC側もそれをベースに会話を整理しやすくなります。
🎯 ③ 「今日いちばん聞きたいこと」を1つに絞る
話したいことが10ある状態で40分は短すぎる。“今日はこれだけは話す”を1つに決めてから行くと、話が深まりやすい。残りは次回に持ち越し。
🤝 ④ 「学校(担任)に伝えてほしいこと」を明示する
SCは校内の教職員と情報を共有できる立場。「これは担任に伝えてもらえると助かります」「これは内緒でお願いします」と境界を明示すると、SCも動きやすくなります。逆に何も指示しないと、SCも何を共有してよいか迷ってしまいます。
SCで足りないと感じたら――次の選択肢
月1のSCだけでは時間が足りない、もう少し継続的に話したい、医療的な評価が欲しい――そんなときは、次の選択肢があります。
🏛 自治体の教育相談センター:無料・継続相談可。SCより回数を増やしやすい。心理職が常駐している地域も。
💼 民間カウンセリング:1回5,000〜10,000円。頻度・場所・相性を自分で選べる。オンライン対応のところも多数。
🏥 児童精神科・小児科の心療内科:医療的評価が必要な状況には病院を。受診の前にSCに相談すれば、紹介状や情報提供書を書いてもらえるケースも。
💬 LINEオープンチャット・親の会:同じ立場の人と繋がる場所。専門家相談とは別の意味で、心を支えてくれます。
今日からの3ステップ
学校に「保護者だけのSC相談」を予約してみる
担任・教頭・養護教諭・学年主任のどなたでも、「スクールカウンセラーに、保護者だけで相談したいのですが」と一言伝えれば予約できます。お子さんに知られたくない場合は、その旨も併せて伝えるとよいです。
“今日いちばん聞きたいこと”を1つだけ決める
行く前に、A4の紙の上部に「今日いちばん知りたいこと」を1行で書く。残りに月の出来事を箇条書きで添える。これだけで40分の密度がぐっと上がります。
“アドバイスを期待しない”モードで臨む
SCに行く前に、「答えをもらいに行くんじゃなく、自分の中の答えに気づきに行く」と自分に言い聞かせる。それだけで、終わったときの満足度がまったく変わります。
SC活用の”前と後”の違い
❌ 使えないと感じる人
「子どもを連れて行く場所」と思っている/”明日からの正解”を期待する/予約は気が向いた時だけ
⭕ 使いこなしている人
「自分が話す場所」と捉える/”整理”を目的にする/月1のリズムを定着させ、メモ持参で臨む
まとめ:SCは「使い方」を変えるだけで価値が変わる
スクールカウンセラーが”使えない”と感じる原因の多くは、「カウンセリングの役割」と「私たちの期待」のズレから生まれています。SCは”答え”をくれる人ではなく、”自分の中の答え”に辿り着くまでを伴走する人。そして、お子さんを連れて行くより、保護者ご自身が使うほうが、ほとんどのケースで効率的です。月1の40分は短いけれど、メモを持参し、聞きたいことを絞り、次の予約をその場で取る――この3つだけで、SCはあなたのご家庭にとって心強い”伴走者”に変わります。CoConは、ご家庭がSCを使いこなせるよう、これからも具体的な情報を発信していきます。