久しぶりの帰省、何気ない電話、義実家での団らん――。お子さんの不登校を打ち明けた、あるいは伝わってしまった瞬間、ふと投げられる「昔はそんな子いなかったよね」。悪気がない、むしろ励ましのつもり、ということもあります。けれど受け取る側にとっては、わが子を、わが家の歩みを、まるごと否定されたような重さが残ります。今回のコラムでは、この”祖父母世代発言問題”との向き合い方を整理します。結論からお伝えすると、説得しなくていい。それより、お子さんと保護者ご自身を守ることを優先しましょう。

“あの会話”、こんなふうに起きていませんか?

不登校支援の現場で、多くの保護者の方から伺うのが、実家・義実家との会話のしんどさです。

よくある”あの会話”

「昔は不登校なんて、そんな子いなかったよ」 「あんたが甘やかしてるんじゃないの?」 「気合いが足りない、無理してでも行かせなさい」 「あんたの育て方の何が悪かったのかしらね」

悪意というよりは、純粋な戸惑いや、孫を心配する気持ち、そして自分たちの世代の常識から発せられる言葉。だからこそ、受け取った保護者の側は反論もしづらく、心の中だけで“わかってもらえない”の闇を抱え込んでしまいます。

この発言問題は、大きく2つのパターンに分けられます。

パターン①:精神論で押してくる祖父母

「気合いだ」「根性だ」「親が引きずってでも行かせろ」――。努力で乗り越えるのが当然だった時代の論理を、そのまま現代に持ち込んでしまうタイプ。「自分たちはこうやってきた」が前提なので、議論になりにくいのが特徴です。

パターン②:保護者(特に母親)を責めてくる祖父母

「あなたの育て方のせい」「ちゃんと躾けてないから」「働きに出てるからこうなる」――。原因を保護者の落ち度に求めるタイプ。本人たちは”アドバイス”のつもりでも、受ける側にとっては自責の追い討ちになります。義実家との関係では、夫婦関係にも影を落とすケースが少なくありません。

なぜ祖父母世代は”そんな子いなかった”と言うのか

背景には、いくつかの世代的な事情があります。

1

実際、世代の体感としては”少なかった”

1980年代の不登校児童生徒数は、小中合わせて数万人台。今と比べれば桁が違うのは事実です。祖父母世代が「いなかった」と感じているのは、嘘ではない。問題は、その体感をそのまま現代に持ち込むと、現状が見えなくなることです。

 
2

“自分の子育て”を否定されたくない不安

孫が不登校になったという事実は、祖父母にとって「うちの家系の問題?」「自分たちの育て方の何かが影響した?」という無自覚な不安を呼び起こします。その不安を消すために、「育て方が悪い(=今の親が悪い、自分たちは関係ない)」という構図に逃げ込みやすくなります。

 
3

「学校=絶対」だった時代のフィルター

学校に行くこと以外の選択肢が、社会的にほぼ存在しなかった時代を生きてきた世代。フリースクール・通信制・多様な学びの選択肢が広がっていることは、感覚として受け入れにくいのも自然です。これは性格の問題ではなく、生きてきた時代の情報量の違いです。

大前提:「説得しなくていい」

ここまで読んで、「じゃあ、どうやって理解してもらえばいいの?」と思われた方へ。CoConから最初に伝えたいのは、ある意味で逆の答えです。

大事なこと

祖父母を”理解者”に変えようとしなくていい。それは、ご自身のエネルギーを最も消耗する作業です。優先順位の一番上はいつも、お子さんの今日の安心と、保護者ご自身の心の余白。祖父母の理解は、その下位タスクで構いません。

説得しようとすると、必ず話は長くなり、感情がぶつかり、結果として家に帰ってからの数日間、引きずる重さを背負うことになります。費用対効果が、合いません。次の章で、説得以外の3つの選択肢をご紹介します。

今日から始められる3つのステップ

1

「35万人プリント」を1枚渡す

議論を始めるのではなく、“数字”を1枚渡すだけに絞ります。文部科学省の最新調査では、不登校の小中学生は約35万人。これは1クラスに1〜2人いる規模で、もう”特別な家庭だけの話”ではない――この事実を、口頭ではなく紙で渡すと、感情的なやり取りを最小化できます。「私が説明したい」のではなく「国がそう発表している」という距離感が、衝突を防いでくれます。

 
2

しばらく”物理的に距離を取る”勇気を持つ

帰省の回数を減らす、電話に出る頻度を調整する、孫を会わせるタイミングを選ぶ――。距離を取ることは、関係を壊すことではありません。むしろ、お子さんの回復期にあって、保護者と本人の心の安全地帯を確保するための合理的な選択です。「親不孝かもしれない」と感じる罪悪感は、いったん横に置いていただいて大丈夫です。

 
3

配偶者と「祖父母窓口」を分業する

特に義実家とのやり取りは、血のつながりがあるほうの配偶者が窓口に立つのが鉄則です。母親が義実家の責めを一人で受け止め続ける構図は、家庭内の摩擦をいちばん増やします。「義実家対応は夫」「実家対応は妻」と窓口を分けるだけで、保護者の心理負担はぐっと軽くなります。

💡 ワンポイント:35万人プリントは、CoConでテンプレートを用意できます

「文科省最新調査・小中の不登校児童生徒数 35万人」「全国の小中学生のうち約35人に1人」など、A4一枚で渡せる形にまとめた資料があれば、自分の言葉で説明するより圧倒的にラクです。CoConのLINEから「35万人プリント希望」とお送りいただければ、PDFをお渡しできるよう準備しています。

やってしまいがちなNG対応

良かれと思っての対応が、かえって関係をこじらせてしまうこともあります。よくある例を、おすすめの対応と並べてみます。

❌ つい言いがち

「今は時代が違うんだから!」(感情で反論)

⭕ おすすめ

「最新の調査だとこうみたいで」と1枚プリントを渡す。議論はしない。

❌ つい言いがち

無理に帰省して、孫を会わせ続ける

⭕ おすすめ

帰省の頻度を一時的に減らす。距離を取る

❌ つい言いがち

義実家の責めを、母親が一人で全部受け止める

⭕ おすすめ

血のつながりがあるほうの配偶者が、窓口に立つ

⚠️ 子どもの前で”祖父母発言”を続けさせない

お子さんは、自分の状況についての否定的な言葉を、想像以上に敏感に受け取ります。祖父母発言を子どもの前で言わせないことは、保護者として正当に守って良い領域です。難しければ「孫の前ではその話はしないでね」と一度だけ明示的に伝える。それで控えてもらえない場合は、距離を取る選択を躊躇しないでください。

まとめ:守るべきは、お子さんと、あなた自身

祖父母世代の「昔はそんな子いなかった」という言葉の奥には、戸惑い、心配、そして古い常識のフィルターが、層になって存在しています。それは、対話を尽くせば必ず溶けるものではありません。だからこそ、説得することを諦める勇気を持ってください。代わりに、「35万人プリントを1枚渡す」「距離を取る」「窓口を分業する」――この3つで、ご自身を守ってあげてください。 祖父母の理解は、結果としてあとからついてくることもあります。でも今、何より大切なのは、お子さんの今日の安心と、保護者であるあなたが、家に帰ってから笑える余白を取り戻すこと。それが、いちばんの優先順位です。

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