THE INSIGHT / CoCon意識調査
2025年、東京都をはじめとして学校給食費の無償化が全国で一気に広がりました。「子育て家庭の負担を減らす」大切な一歩です。けれど、この施策で救われるのは、“学校の給食を食べている子”のご家庭だけです。不登校で学校の給食を食べていないお子さんのご家庭は、その恩恵を受けられません。CoConが実施した意識調査(N=19、うち保護者18名)で明らかになったのは、回答者の100%が「不登校児童が恩恵を受けられない状況は問題」と感じ、経済的・精神的いずれの負担も100%が「感じる」という、当事者の切実な声でした。この記事では、実データと自由記述の生々しい言葉をあわせて紹介しながら、”見えない格差”を深掘りします。
📋 CoCon意識調査 概要 📋
“取りこぼされる家庭”の声を、可視化する。
※ 本調査は小規模かつ回答者の94.7%が不登校児童の保護者(当事者)である点にご留意ください。統計的な代表性より、当事者の生の声を可視化することを主眼とした調査です。
目次
学校給食費無償化の広がり――そして、その”死角”
給食費の無償化は、ここ数年で急速に広がっている自治体施策です。2025年度からは東京都が都内全域で小中学校の給食費無償化を実施。全国レベルでも、無償化に踏み切る自治体は年々増加中。子育て家庭の家計負担を軽くする、極めて意義の大きい政策です。けれど、この制度の設計には、明確な”死角”があります。
構造的な問題
給食費の無償化は、“学校で給食を食べていること”が前提の制度です。不登校児童のご家庭は、この恩恵の対象外。しかし、“食べる子ども”がそこにいることは変わりません。3食をご家庭で用意する分、むしろ食費負担は増えているのが実情です。
今回のアンケートでは、この構造が生む負担と、当事者の切実な声が、はっきりと数字と言葉で浮かび上がりました。
調査結果①:給食費無償化そのものへの評価は”割れる”
まず、給食費無償化そのものへの評価から。5段階評価(1=全く評価できない〜5=非常に評価できる)で聞きました。
📊 回答結果(N=19)
・非常に評価できる(5):4名(21.1%) ・評価できる(4):3名(15.8%) ・どちらとも言えない(3):7名(36.8%) ・あまり評価できない(2):4名(21.1%) ・全く評価できない(1):1名(5.3%)
興味深いのは、「どちらとも言えない」が最多(36.8%)だったこと。肯定側(36.9%)と否定側(26.4%)はほぼ拮抗。政策そのものに全面反対する声は少数(5.3%)ですが、“手放しには喜べない”という、不登校当事者の複雑な感情が読み取れます。
調査結果②:不登校児童が恩恵を受けられない状況を、100%が「問題」と回答
📊 回答結果(N=19)
・非常に問題であると感じる:17名(89.5%) ・ある程度問題であると感じる:2名(10.5%) ・どちらとも言えない〜全く問題でない:0名(0%)
この結果は、極めて明快です。回答者の100%が、この状況を「問題」だと感じている。そのうち約9割が「非常に問題」と最も強い認識を示しました。“制度から取りこぼされる家庭がある”という事実は、当事者にとって、大きな問題であると認識されているのです。
調査結果③:支持圧倒的トップは「現金給付」(89.5%)
CoConは、不登校児童への食の支援として、5つの選択肢と自由記述を提示しました(複数選択可)。各選択肢を選んだ延べ人数はこうなりました。
📊 回答結果(複数選択可・N=19)
・給食費相当額の現金給付:17名(89.5%) 🥇 ・給食費相当額の現物支給(食料品券など):10名(52.6%) ・フリースクール・居場所での食事提供費用の助成:8名(42.1%) ・訪問型支援(アウトリーチ)での食事提供:3名(15.8%) ・オンライン学習環境での食育・調理体験プログラム:2名(10.5%)
現金給付が89.5%と圧倒的トップ。次いで現物支給52.6%、フリースクール助成42.1%。この結果は、CoConにとっても重要な示唆をくれます。
💡 なぜ現金給付が圧倒的支持なのか
自由記述には、こんな声がありました。 「振り込みが一番助かります。振り込みであれば子供のニーズに合わせられます。特性があり偏食の子、外食を楽しめる子、好きな宅配を注文、自分で食材を買って料理を楽しむ子、お弁当を持って外の学びの場へ行ける子など様々です」(自由記述より)
そう、不登校の子どもの状況は、本当に一人ひとり違う。使い道を柔軟に選べる現金給付こそが、当事者の実態に合っている──というのが、この結果の背景にあります。また、「フリースクール、オンライン、アウトリーチができない児童生徒もいるので現金支給希望」という自由記述からも、“どの支援スキームからもこぼれ落ちる家庭”が現金給付を強く必要としている実態が見えてきます。
調査結果④:経済的・精神的いずれも100%が「感じる」
保護者が感じている負担を、3つの側面から測りました。結果は驚くほど揃っています。
📊 回答結果(各項目:「非常に感じる」+「ある程度感じる」の合計・N=19)
・経済的な負担(家庭での食費増加) ⇒「非常に感じる」18名(94.7%)+「ある程度感じる」1名 = 100% ・精神的な負担(不公平感、孤立感) ⇒「非常に感じる」14名(73.7%)+「ある程度感じる」5名 = 100% ・支援制度の複雑さ・情報不足による負担 ⇒「非常に感じる」14名+「ある程度感じる」4名 = 94.7%
3つの負担それぞれで、ほぼ全員が「感じる」と回答。特に注目すべきは:
- 経済的負担「非常に感じる」が 94.7%(18/19名) と圧倒的
- 精神的負担「非常に感じる」も 73.7% と極めて高い
- “経済”と”精神”の負担が、ほぼ同レベルで発生している
この事実は、CoConにとって決定的です。「他の子は無償化されているのに、うちの子は対象外」という制度メッセージは、“あなたたちは、この社会の想定外です”と告げられるようなもの。制度から取りこぼされる感覚は、家計への打撃と同じくらい、保護者と子どもの尊厳を傷つけています。
調査結果⑤:78.9%が「総合的支援が不可欠」と回答
📊 回答結果(N=19)
・食の支援だけでなく、学習・居場所・心のケアを含む総合的な支援が不可欠:15名(78.9%) 🥇 ・まずは食の支援を優先的に行うべき:2名(10.5%) ・給食費無償化とは切り離して、不登校支援策を検討すべき:2名(10.5%) ・現在の支援体制で十分:0名(0%)
約8割が「食+学習+居場所+心のケアの総合支援が必要」と回答。そして「現在の支援体制で十分」は誰一人選ばなかった。当事者の側から見れば、今の制度は明らかに足りていないのです。”食”の支援はゴールではなく、総合支援への”入口”として設計されるべきだ──という強いメッセージが読み取れます。
当事者の声:自由記述に寄せられた言葉
数字だけでは伝わりきらない、当事者の切実な声を、自由記述からいくつかご紹介します。
「学校に行けている子供達は、無償にします。じゃー行けてない子供達は、知らんぷりでいいのでしょうか!表向きは、よい策をしていますが、見えない所で、苦しんでいる、子供達、家族を、わすれてはいけないんです」
「住んでいる市の市役所担当者に、『前提として小学校に”普通に”通えていること』ということを言われた事がある。支援を受ける事ができないが、是正はしろと迫られる」
「学校に通えなくなった途端に義務教育という場所から外れてしまい、教育だけでなく他の家庭や児童が受けられる支援まで受けられないのかとかなりショックでした」
「毎年年度はじめに給食費を止めてもらうよう担任に交渉している。担任次第ですぐ止める、数ヶ月負担があると対処方法が違う。新年度交渉は4回経験済。対処が遅い担任にあたれば、他の子のおかわり分を負担しているし家庭でのお昼代のダブルパンチかと落胆していた」
「町議会議員をしています。同時に不登校児童2人の父親です。わが町では、不登校児童への支援は協議がしっかりされていないようで、4月1日現在も案内などはありません。このまま動きが無いのなら、他の自治体を例に出して、一般質問を行うつもりです。本来であれば、そのようなことはせずに、不登校児童を持つ家庭の支援として、給食費と同等の額を給付して欲しいのが本音です」
「これを契機に、不登校や給食を食べない選択をしている子どもたちに、西東京市のように公平な対応をする行政が増えてほしい。声を上げ続けることはとても重要だと考えます」
「給食費無償化とは別の事ですが、学校の健診を受けられない不登校児童生徒の健診を守るために健診費用の補助やメンタルクリニックの補助が必要ではないかと考えます」
これらの声を読み返すと、”給食費”の問題は、義務教育という制度そのものから”取りこぼされている”という当事者の実感に地続きです。健診・医療・生活支援まで──学校を軸に組み立てられた制度パッケージのすべてが、不登校の家庭に届いていない構造が見えてきます。
深掘り:調査から見える4つの問題構造
アンケートの回答傾向と自由記述を重ね合わせると、この問題には4つの構造的な問題が横たわっています。
制度設計が”学校に通っていること”を前提にしている
給食費無償化に限らず、日本の子育て支援制度の多くが“学校を軸”に組み立てられています。市役所担当者に「前提として”普通に”通えていること」と告げられたという回答(自由記述より)が、その象徴です。不登校35万人時代に、この前提はもう限界です。
経済的負担と同じくらい”精神的負担”が発生している
経済的負担「非常に感じる」94.7%、精神的負担「非常に感じる」73.7%。この数字が示すのは、制度から取りこぼされる感覚が、家計への打撃と同格に保護者を追い詰めているという事実です。「学校に行くことが当然とされている事実を突きつけられている」(自由記述より)──この痛みは、給付額の議論だけでは癒せません。
“支援制度の複雑さ・情報不足”が94.7%と極めて高い
仮に代替支援制度が存在しても、それを知らなければ利用できない。回答者の94.7%が「情報不足による負担を感じる」と答えました。行政の情報発信力の不足を、民間で補う仕組みが必要です。CoConが情報発信で貢献できる領域はここにあります。
当事者が求めているのは”柔軟性”――だから現金給付が89.5%
不登校の子どもの状況は、本当に一人ひとり違います。偏食、外出できるかどうか、興味の対象、体調──それに応じた食のあり方も違う。フリースクールに通える子もいれば、家から出られない子もいます。だからこそ、“使い道の柔軟性”を担保する現金給付が圧倒的支持を得た。この事実は、制度設計者が真剣に受け止めるべきです。
💡 ここが根っこ
給食費無償化から取りこぼされる不登校児童の家庭の問題は、「食」の問題であると同時に、日本の子育て支援政策全体が”学校を軸に組み立てられている”という前提の問題でもあります。この前提を、少しずつ組み替えていく作業が、これから必要です。
CoConからの3つの政策提言
今回の調査で集まった声、そしてCoConが日々受けている保護者からのご相談を踏まえ、私たちから3つの提言をさせてください。
提言① 給食費無償化とセットで”現金給付”を制度化する
今回の調査で、当事者の89.5%が現金給付を支持しました。給食費無償化を導入する自治体は、「学校の給食を食べていない児童生徒の保護者への給食費相当額の現金給付」をセットで制度化してください。自由記述にあった「西東京市のように公平な対応」を、全国の標準にしていくべきです。
提言② フリースクール・居場所での食事提供費用の助成も並行整備
当事者の42.1%はフリースクール等での食事提供費用の助成も支持しています。現金給付とセットで、通える場所での食事保障を制度化することで、家庭内の負担軽減と、社会との繋がりの回復を同時に実現できます。フリースクール運営者への財政支援としても機能します。
提言③ “食”を入口に、学習・居場所・心のケアへ繋ぐ総合支援設計
当事者の78.9%が「総合支援が不可欠」と回答しました。給付・支給の窓口で、同時に教育相談・カウンセリング・居場所紹介・健診支援など総合支援への案内ができる仕組みを設計すべきです。自由記述にあった「学校の健診も受けられない」「メンタルクリニックの補助が必要」といった声を、施策に反映してください。
保護者の方へ、そして自治体・議員の方へ
最後に、それぞれの立場の方へ、CoConからのメッセージです。
📣 保護者の方へ
今回のアンケートで、あなたと同じように「経済的負担も、精神的負担も、100%が感じている」ことが可視化されました。あなただけが感じている痛みではありません。声を上げていいこと、支援を求めていいこと──それは制度の対象になっていないご家庭でも変わらない権利です。CoConは、あなたのその声を届ける役割を、これからも担っていきます。
📣 自治体・議員の方へ
給食費無償化を検討・実施される際は、ぜひ「学校で給食を食べていない児童生徒の家庭」への現金給付もセットで議論してください。予算規模は決して大きくありません。今回の調査で当事者の89.5%が現金給付を支持し、100%がこの状況を「問題」と回答しています。この配慮の有無で、“制度からこぼれ落ちる人がいない社会”への一歩になります。CoConは、実務的な情報提供・意見交換に、いつでもお応えします。
「学校に通っていること」を前提にしない制度設計へ
今回のCoCon意識調査(N=19)が明らかにしたのは、当事者の100%がこの状況を「問題」と感じ、100%が経済的・精神的負担を実感し、89.5%が現金給付を求めているという、極めて明快な事実でした。給食費無償化は意義の大きな政策です。だからこそ、その恩恵から取りこぼされる家庭を意図せずに生んでしまうことを、私たちは看過できません。“学校に通っていること”を前提としない支援制度の設計は、不登校35万人時代の日本社会が、これから本気で向き合わなければならないテーマです。CoConは、”取りこぼされる家庭”の声を可視化し、政策に届けていく活動を、これからも続けていきます。今回の意識調査にご回答いただいた19名の皆さま、本当にありがとうございました。この結果を、次のアクションに繋げていきます。