いじめ被害、不登校、そして難関資格への挑戦。17歳の悉知信(しっち・あきら)さんの歩みが、不登校に悩む人々に希望を与えています。小学校でのつらい経験を乗り越え、S高校1年生で行政書士試験に合格した悉知さん。今、彼は子どもの権利を守る弁護士を目指しています。
この記事では、現在高校2年生となった悉知さんの不登校経験、行政書士合格の秘訣、そして未来への展望をお伝えします。
目次
いじめ、そして不登校——「人生が終わった」と思った日
悉知さんは、高校1年生で行政書士試験に合格を果たしました。
しかし、その背景には想像を絶する苦難があったといいます。
小学6年生のときにいじめを受け、中学では不登校を経験したのです。
悉知さんは不登校になった当初、「人生が終わった」と感じたそうです。
しかし、時間とともに考え方はだんだんと変化していきました。
「学校だけが居場所ではないし、学校に行かなくてもある程度勉強できることに気づいたんです」
この気づきは、不登校期間を乗り越える大きな力となりました。オンライン学習や勉強動画、テキストなどを使えば、学校という場所にとらわれなくても自由に学べます。
「学校に行かなくても能力が落ちたりはしないし、むしろ自分の好きなことをしっかり学べる機会になる場合もあると思っています」
苦難を乗り越え、法律の世界へ
さらに悉知さんの視野を大きく広げるきっかけになったのは、行政書士試験の勉強でした。
「いじめを受けて、論理的に説明しても通じない人がいることを痛感しました。もともと警察官や弁護士のような『誰かを救う職』に興味があったのですが、いじめと不登校の経験からその思いがさらに強くなり、法律の道を志すようになったんです。そこで取得を目指したのが、行政書士試験でした」
法律の勉強を進めるうちに、悉知さんは「広い意味での社会のシステム」についてイメージが湧くようになったそうです。
「行政書士の勉強を通じて、社会科に近い内容や、国語、経済、世界情勢など、さまざまな分野に触れられました。たとえば『憲法で保障されている自由』について学んだことで、自身の状況を新たな視点で見直せるように思います」
「世界はもっと広い」という気づきが、不登校という状況に縛られない新たな可能性を見出すきっかけとなりました。
独学で挑んだ行政書士試験、自主勉強のコツは?
独学で挑んだ行政書士試験。勉強は決して楽ではありませんでした。
「法律用語が難しくて苦労しましたね。日本語なのになにを言っているのかわからないこともありました(笑)」と悉知さんは語ります。
試験日まで残り半年。短い時間で効率的に勉強するために、戦略を練りました。本や動画を活用し、効率的な学習方法を模索しました。スマートフォンでもテキストが見られるように準備し、隙間時間を有効活用して学んだといいます。
勉強を継続するコツについて、悉知さんはこう語ります。
「1日でも触れないと不安になってしまうので、たとえ1秒でも教材に触れるようにしていました。やる気が出ないときのために、『1日1問』など『最低限のハードル』を設けておくのもオススメです。やる気がないときに無理に勉強しようとしても身につかないので、メリハリをつけて勉強できるよう心がけていました」
自主勉強を進めるにあたっては、計画性も重要だそうです。
「ゴールから逆算して計画を立てました。でも、予定通りにいかないこともありますよね。そんなときのために、1週間のなかに予備日を作っておくんです。僕の場合は通信制高校に通っており、登校日が週に3日あるので、その日は予定は入れませんでした。週4日の中でできる勉強計画を立てることで、高校の勉強とも無理なく両立できたと思っています」
不登校経験を糧に、子どもの権利を守る弁護士へ
悉知さんの日々の勉強の積み重ねが実を結び、見事行政書士試験に合格を果たしました。
「国から能力を認めてもらえたことが嬉しかったですね。通信制高校へのマイナスイメージを持たれることも多かったのですが、難関資格に合格できたことで、自分のやりたいことを伸ばしつつ学べる環境だと示せたと思います」
資格取得はゴールでもあり、さらなる夢に向けた出発点でもあります。次の目標は、弁護士。さらに弁護士のなかでも、学校に特化した「スクールロイヤー」(※)として活動したいと考えています。
「弁護士という立場から学校教育にかかわりたいですね。『子どもの権利を守ること』に焦点を当てて活動したいと考えています。現状では、子どもの権利に注目する弁護士は少ないですが、だからこそ、僕は元当事者として声を上げていきたい」
子どもを法律の力で守れる弁護士になるために、悉知さんはすでに行動を起こしています。政治家との意見交換や市議会への陳情など、積極的に現状を伝え、改善策を探っているのです。
「いじめや不登校の問題は昔からあるにもかかわらず、今でも状況が変わっていません。これは、学校や国の対応・対策が不十分だからではないでしょうか。かつての僕のように悩んでいる子を、1人でも多くの人を救いたいです」