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おはなしワクチン|大切なのは、心のレジリエンスを保つこと


 
 
何かで失敗したり、嫌なことがあったときに、「へこむ」という言葉を使いますよね。そういうときはため息が出て、背中も丸くなり、本当に全身がへこんでしまったような感覚に陥ります。たぶん、人の心にはゴムボールのようなものがあって、ネガティブな体験をしたときには、そのボールがへこんでしまうのでしょう。
 
軟式テニスのボールを手にしたことのある人ならわかると思いますが、ゴムボールは空気がしっかり入っているときには弾力があり、へこんでもすぐに元に戻ります。この復元する力は「レジリエンス」と呼ばれ、たいていの人に備わっているものです。人間、少々嫌なことがあっても乗り越えられるのは、心のボールにレジリエンスがあるからです。
 
ただし、長期間ストレスを受けていると、心からも空気が抜け、レジリエンスが低下していきます。こうなると心は弾力を失い、へこむとなかなか元には戻りません。不登校になっている子の多くは、このようにレジリエンスが低下した状態にあると考えていいでしょう。

 
学校に行かない子を見ると、親はつい「少々嫌なことがあってもがんましろ」と言いたくなりますよね。確かに心が元気でレジリエンスがある状態なら、そう言ってもさしつかえないでしょう。でも、心が弾力を失い、レジリエンスが低下している状態の子にそれを言うのは酷というものです。
 
そして、心の復元力=レジリエンスは、一旦失われると元に戻るまでに長い時間を要します。心のボールに自然に空気が溜まってくるのを待たねばならないからです。だから、子どもが不登校になったとき、まず大切なのは心のレジリエンスを保つこと。そのために今は無理をさせずに、安心して家に居られる環境を整える必要があるのです。
 
勉強の遅れや進学のことなど、こどもが不登校になると心配なことがいっぱいありますよね。でも、そういった心配ごとはすべて将来のことで、大切なのは“今の子どもの元気”を保つことなのです。子どもの心にレジリエンスさえあれば、将来のことは何とでもなります。
 
子どもは親が思っているほど弱い存在ではありません。少々のことではへこたれない強い子に育てるためにも、今は無理をしないで、ゆっくり休むことが大切だと思います。

 
 
 

文・蓑田雅之
おはなしワクチン