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【インタビュー】オンラインフリースクール「NIJINアカデミー」スタートに向けた思い

 

9/1にオープンするNIJINアカデミー。メタバース校舎を兼ね備え、「オンラインでも日本トップの授業が受けられる」フリースクールとしていま注目を集めています。今回はNIJINアカデミー代表・星野さん、スタッフの高橋さんにお話をうかがいました。

 

 

NIJINアカデミー公式HPはこちらから

 

 

「NIJIN」代表&スタッフにインタビュー

取材担当:まずは自己紹介いただいてもよろしいでしょうか?

星野:私は、元小学校教員です。「暗い顔で過ごす子が国の未来でいいのか?」ということに課題意識をもち、日本中の子供と、それから教師も、ハッピーに!という想いで、起業して今2期目になります。

 

既存の教室をハッピーにするために「授業てらす」という、教員研修プラットフォームも運営しています。参加者は500人を超えて、日本最大級の教師団体になってきています。本当に多くの先生が、授業を転換して「先生、授業楽しいですって子どもたちが言ってくれました」と喜びの声を届けてくれます。

 

こういった取り組みに手応えは感じているんですけれども、同時に1割2割の子供たちがどうしても学校に合わず「不登校」という選択をしている現実があります。
先生も対応に追われてしまう、保護者は自信をなくしてしまう、という中で「学校に行けなかったとしても日本最高峰の教育を届けられるように」という願いから今回NIJINアカデミーを始めることにしました。

 

学校教育を軸に事業をやっているので、「既存の教室をハッピーにする」という大きな軸と、どうしても学校が合わないけれど、学校以外の場所で豊かに学んで、ちょっと繋がってっていうNIJINアカデミーという軸と。その両面で、日本中の学校をHAPPYにしたいなと思っています。

 

高橋:私は現在、教職大学院の院生をしています。昨年までは、神奈川県の小学校に勤めていて、今もそちらに籍は置いています。「授業てらす」と「学校CHLOOS」というサロンに所属していた縁で星野と繋がっていました。そして今回、いよいよ学校を立ち上げるというタイミングで、その理念に共感したことから、NIJINアカデミーのスタッフや運営を任せてもらっています。

 

「NIJIN」の由来

取材担当:「株式会社NIJIN」「NIJINアカデミー」の名前の由来、込めた願いについて詳しく聞かせてください。

星野:元々私が1年4ヶ月前に会社を起こしたとき「自分を出せない子どもたちが日本は多すぎる」という想いが起業のきっかけになりました。
それは子供のせいでもないし、教師のせいでもないし、全て仕組みにあると。だから仕組みから教育を照らすんだっていう思いで会社を作って、こうして教育事業をやっています。

起業のきっかけがそもそも「子どもが自分を出せるようになる」っていうストーリーだったので、これが本当にやりたかったことということで、会社名を学校の名前に使っているっていうところは、まず1つあります。

次に、「日本人」。日本に生まれて日本人として育つ子どもがここでは多いので。
私は海外経験もあるんです。だから余計に、やっぱり日本っていう国とか、日本人っていう人に希望を持ってもらいたいなって。

また、基本的な人生観として「2人」っていうのを大事にしています。2人、音読みして「にじん」です。
人生っていうのは、登場人物が2人いる。自分と、自分以外の誰か。自分だけではない、ここが重要なところです。

そういう思いもありますし、単純にHAPPYRainbowっていうのが好きっていうのもあります。人はみんなHAPPYになるために生まれてる。人をHAPPYにするために生きてるんです。この両面を忘れてはいけない。HAPPYになって、そしてHAPPYにする。あるいは、人をHAPPYにすることで、自分がHAPPYになる。そういうのを総合して、NIJINアカデミーを立ち上げてます。

取材担当:NIJINアカデミーでは「協働的な学び」を大切にしているとあります。不登校向けの学習サービスは1対1のところも多いですが、校舎があること、5人学級制などの取り組みもこの「2人(にじん)」の考え方から来ているのでしょうか?

星野:もうまさにですね。
私は「対話」をすごく大事にしています。対話って面倒くさいんですよね。人付き合いって面倒くさいじゃないですか。人と関わると、トラブルも起こるし、傷つけ合うし、迷惑も掛け合うし、いろんなことを考えなくちゃいけない。でもそれが人生。対話っていうのはやっぱり人生を豊かに発展させる。障害でもあり、絶対に乗り越えなければいけない壁でもあり、そして何より楽しいものでもあると思っている。

対話を大切にした授業や学級経営を自分自身もやってきたし、「授業てらす」でも大切にしてやってきて、そこで教師が育ってるんですよね。だから、きっとNIJINアカデミーの子どもたちは大きく表情が変わると確信してます。

「NIJINアカデミー」のカリキュラム

取材担当:NIJINアカデミーのカリキュラムについて詳しく教えてください。

星野:NIJINアカデミーのカリキュラムは4つの要素で構成されています。

トップレベルの教師による教科学習というのが、「授業」にあたります。目的としては、「学ぶ楽しさを知ってもらう」こと。学校の勉強ってつまらないイメージがあると思うんですけれども、そうではなくて「楽しいな」と思うと、子どもたちは自分で学ぶようになるんですよね。

これは私自身の教師経験から確信してることです。授業が面白いと、子どもは勝手に学び始めます。それこそが本来の姿だと思ってます。

不登校かどうかに関わらず、子どもは学びたくてたまらない生き物なので、「学ぶ意欲に火をつける」ことができれば、学び始めるんです。なので私達は「授業」というものは「子どもの学ぶ意欲に火をつけるもの」だというふうに定義してます。

取材担当:この「授業」の部分を、実力派の先生たちが担当されているんですね。

星野:そうですね。
授業者は「授業てらす」の中で先生の先生をしている先生、全国の教師から憧れで目標となっている先生を起用しています。名門国立、名門私立、世界でトップ50に入るような先生もいるので、いわゆる「すごい先生」が授業をしてくれるっていうところですね。

取材担当:なるほど。では、「自由進度学習」とはどのような学習形態なのでしょうか?

星野:学びに大事なのは「実力のある先生から優れた授業を受ける」ことだけではありません。子供たちを認めて、その行動とか学習を価値付けて、それを見える化する——「心理的安全性の高い空間を作る」ためには教育のプロが必要です。そのあたりは授業者とは別の「担任」が5人制学級のなかで行います。子どもたちの心に寄り添って、HAPPYを約束するプログラムです。

担任と一緒に「自由進度学習」という形で5人制学級を組み、子どもたちと一緒に計画を立てます。学ぶ意欲に火がついて「歴史をもっと学びたい」と思ったら、歴史いいね!誰から学ぼうか、どうやって学ぼうかというのを担任と一緒に計画していきます。

取材担当:学習課題を、一人一人が自由に設定できるということですね。

星野:「掛け算が言えるようになりたい」「図形をもっと深く知りたい」「理科の実験をしたい」……いろんな子がいると思うんですけど。その多様な子供たちに合わせるために5人制学級の中で担任がサポートをして、子供たちの学びや変容というのを見える化します。

そうすると、子どもたちはもっと学びたくなるので、授業にもっと意欲的に参加してくれます。さらにそれから自信をつけて、部活動とかプロジェクト型のもの——ハロウィンパーティーの計画を立てたり、学園祭を成功させようとしたりとか、そういった活動にもどんどん参加するようになります。

学校教育でできる最高の教育というのは「子どもたちの1人1人の物語を大切にする」っていうことだと思っていて、そういった教育をオンラインで実現していけるカリキュラムになっています。

NIJINアカデミーがメタバース校舎にこめた想い

 

取材担当:NIJINアカデミーは、メタバース校舎が話題ですね。どのような願いや狙いが込められているのか教えてください。

高橋:学校なんだけど、いわゆる「学校」ではない校舎というところです。温かみのある色も入れて取り入れつつ、自由に使える大きな広場があったりもします。

最初にパソコンでログインすると、1階につきます。みんなで集まれる場所、朝のホームルームや行事で使う空間がまずあります。
2階は、自習室をメインに作ったフロアです。バーチャル校舎内にYouTubeのデータをつけたり、資料を添付したりという機能もあります。子どもたちだけで自習できる空間になるように工夫しています。スタッフもいますが、必要があれば声を掛けてもらうようなイメージです。保護者と話したり、ヒアリングしたりする場所もここにあります。
3階は屋外にある広場です。昼休みにここでお友達と話したりとか、また部活動で何かこの場所に集まってみんなでミーティングしようとか、っていうふうに使ってもらってもいい場所になっています。

取材担当:校舎の設計やデザインは高橋さんが担当なさったんですか?

高橋:最初は私がやっていたんですけれども、スタッフが増えてきたタイミングで詳しい人にバトンタッチしました。

取材担当:高橋さんにも、メタバース関係の知見がある?

高橋:特に知見があったわけではないのですが、企業の方に教えてもらったり、自分で調べたりしつつ、その繰り返しをしつつ、挑戦していましたね。

取材担当:中で働くスタッフも、自ら学び、挑戦する姿勢のある方なのですね……!

保護者との関わりも大切に

取材担当:保護者の方と話せるスペースがあるとのことでしたが、子どもだけじゃなく、保護者の方もログインできるような環境なんですね。

高橋:そうですね。入学された方に「1アカウント」として渡すので、自由に入れますね。特に低学年のお子さんは保護者の方が横にいるような状態でスタートすると、我々も想定しています。最初はコミュニケーションが取りにくいと感じる子もいるでしょうから、そこは一緒に協力しながら進めていきたいですね。

取材担当:保護者の方へのサポートや面談を定期的に入れて、二人三脚で学んでいく仕組み作りがなされているのですね。

星野:保護者との面談は、普通の学校よりは多いと思いますね。
最初の3週間は、ずっと面談をします。四半期ごとにも、三者面談なり、保護者面談、子ども面談をしていきますし、週1でクラス会議もあります。プラス月1で保護者会もあるので、結構密になっていく保護者もいると思います。ただ、全てが希望制の参加なので、参加せずとも劣等感を感じないような設定にはしたいなと思ってます。

「NIJINアカデミー」オープンに向けた意気込み

取材担当:NIJINアカデミーはいよいよ9月からスタートということで、オープンに向けた意気込みをぜひ聞かせてください。

星野:やっぱり楽しみですね!
説明会では、1回目は100組以上、また来週もおそらく100人ぐらい来ていただいています。子どもたちと触れ合うことができて、保護者の方と対話することもできています。子どもたちも顔出しして手振ってくれて。「早くNIJINアカデミー行きたい!」っていう感じです。

私も元々不登校であろうとなかろうと子どもは一緒だと思っているタイプなので、楽しいことみんな大好きですし。認めてもらいたい、見てもらいたいと思ってますし、だから一緒に楽しいことをして、その子のことを見てあげて、いい部分をたくさん価値づけられるようにしたいなっていう、今、教師魂っていうんすかね、そういう気持ちが今は大きいですね
早く一緒にバーチャル校舎で遊びたいです!

高橋:9月からに向けて、もうわくわくしてますし、どうなるんだろうっていう期待でいっぱいです。スタッフもみんなそう思ってると思います。子どもたちも「新しい場にチャレンジしよう」って思いで来ているので、すごいことだなと思いますね。
一歩踏み出した子どもたちを受け入れて、「学ぶっていいよな」「NIJINアカデミーに来てお友達と会って話すとか、楽しむっていいよな」って少しでも思ってもらえたらなって思っています。

「NIJIN」「NIJINアカデミー」今後の展望

取材担当:ぜひ将来の展望を教えてください!

星野:会社としては「日本中の学校をHAPPYにして国を照らす」。これに向かい続けている。
教師経験から確信しているんですが、子どもの表情以上に国の未来が良くなることはないんです。教室は社会の縮図。教室で暗い顔をして過ごす子どもたちを見ているのは、やっぱり苦しいですよね。いろんな意味で苦しいです。それが今、社会でもいろんな悪影響をもたらしているように私には見えている。

いかに私は社会人が良いサービスを作ろうとも、政治家が、えらい経営者がいろんな事をしようと、やっぱりこの目の前の子どもたちが、教室が、HAPPYでないと、この国はよくならない。だから、教室をHAPPYにするんです。

プラス、冒頭も申し上げましたけども、学校が合わない子どもたちにとってもやっぱり学校は苦しいものでしかないので、学校に行かなくても、豊かな学びができる時代をつくる。そして不登校という概念や言葉自体をなくす。

「学校行ってるんだ」「オンラインで学んでるんだ」っていうのを「あっ、ピアノ習ってるの?私はプール!」ぐらいのノリで話せる時代を私は作りたいなって思ってます。どっちでもめちゃくちゃ楽しいと。学校に行ってもめっちゃ楽しいし、オンラインでもめっちゃ楽しい。これが尊重し合えるような国にしていくっていうのが1つ、目標ですね。

まだ今後の展望もたくさんあります。渋沢栄一が500個ぐらい事業を作ったんですが、私はまだ8つしか作ってないので、300ぐらいは作りたいなっていう。この300の事業をもってして、仕組みから国を照らす。やり続けていきたいと考えています。

高橋:まず、実際に9月1日から目の前の子供たちと関わっていくので、子どもたちをまずHAPPYにする、一緒にHAPPYを作っていくっていうところに、もう全力を注ぎたいです。実際私も担任として関わるので、まずそこかなって。NIJINアカデミーっていう居場所にお子さんが来て、どんどん子どもが増えて、HAPPYがどんどん伝わっていって、そこでHAPPYになってくれたらいいなって思ってます。

★プロフィール

星野達郎さん
株式会社NIJIN 代表取締役

千葉大学教育学部卒業。学生時代は団体ツアーの添乗員として全国を飛び回り、お客様評価4.7の人気添乗員となる。
​卒業後は、青年海外協力隊としてグアテマラへ。現地では、授業研究の仕組みを県内15市で開発・普及させ、算数の教員研修プログラムを県・市の教育事務所と協働して開発。研修講師として各地を飛び回る。
​帰国後は公立小学校の先生として子ども本来の力を引き出す教育を研究&実践。市内の先生に研究授業を公開、学級の子どもたちと熊本豪雨で被災された地域に10万円を寄付、市長から感謝状をもらう。また、先生業の傍ら、地元の老舗旅館の支援や、モンテッソーリ教育の視点を取り入れた子どもの遊び場づくりを行い、地元紙にも掲載される。
​現場で感じた教育課題から起業を決意。ハッピーな教室を全国に増やすために、2022年4月から「授業てらす」を展開。子どもと先生が希望をもてる学校づくりをめざす。

高橋弘樹さん
神奈川県小学校教諭

上越教育大学大学院に在学中。日本イエナプラン教育協会事務局。
現在は休職し教職大学院に通う。研究の傍ら、NIJINアカデミーの開校準備や、株式会社NIJIN主催のイベントの企画運営に参画。
日本の当たり前と思われている教育に小さな疑問が生まれ、様々な書籍や研修などで学んでいくうちにオランダのイエナプラン教育に出会う。2021年度には、日本イエナプラン教育専門教員資格研修を受講しブロックアワーの実践研究を行う。『学び合い』や「サークル対話」など、よりよい教育に向けて子どもたちと試行錯誤している。